音程いろいろ
先日、「弦楽器のイントネーション」という本を買った。弦楽器弾きなら誰しも悩む、旋律の音程、ハーモニーの音程について事細かく記載されており、とても参考になった。
結論としては、音程には「旋律的イントネーション」「和声的イントネーション」がある。我々弦楽器奏者は両者を使い分けて曲を弾く必要があるということ。
メジャーコードであれば第三音を14セント下げることで完全なハーモニーを得られるのはよく知られている。
ドミソであればミ、ファラドであればラだ。これが和声的イントネーション。いわゆる純正律というもの。
ただ、この音程で旋律を弾くととても締まりがない。旋律を弾く時は旋律的イントネーションで弾く。これはピュタゴラス音律のこと。
チェロのCメジャースケールで説明しよう。
C線1ポジD音は、G線完全4度下で合わせる。
C線2ポジE音は、A線完全4度下のE音のオクターブ下で合わせる。
F音はC開放弦の完全4度上。
G音は開放弦。
A音はA線開放弦のオクターブ下。
B音はA線開放弦4度下のE音の完全4度下。
C音はC線開放弦のオクターブ上。
これは僕もチェロ学習初期で確認していた作業だった。ピュタゴラス音律だったのか。
説明によると全音は広め、半音は狭めになるよってこと。ただ、狭めと言っても2セントとか4セントの話だからほんの気持ちの話かも。
チェロという楽器の役割上、伴奏の方が多い。そこで、和声的イントネーション、旋律的イントネーションがごっちゃになっていたけど、これからはハッキリと使い分けてみたい。
ちなみに両イントネーションで顕著に違うのはメジャースケールの3,6,7音。16セントも違う(100セントで半音)。
一番参考になったのは、実際にカルテットで弾く時どうするのってこと。
簡単にいうと、メロディは旋律的イントネーション、伴奏は和声的イントネーションにしましょうと。ただ旋律的イントネーションでも、音によっては和声的イントネーションも採り入れると。
例えばCメジャーの曲を弾くとき、旋律でfis音を弾くとき。和声がダブルドミナントのDコードだったら、14セント低くとって一時的に和声的イントネーションとするみたいな。
でも早いパッセージだったら旋律的イントネーションの方が煌びやかに響く。
カルテットをやる時は、楽器を弾けるだけじゃダメ、基礎的な和声知識を持って事前にスコアリーディンしてねって話。
でもこの話はロマン派初期くらいまで。時代が進む程に、和声も構造も複雑になるから、旋律的イントネーションでやった方がいいとな。
文章にするとそんな細かいことって思うけど、多分みんな無意識でやってるはず。
読み終わった後、ヴィルトゥオーゾが聴かせてくれるあの煌びやかで心地良い音程の秘密を垣間見た気がした。絶対ピアノの平均律音程じゃあんなんならんもん。
あと、バロック様式を弾く時。バッハとか。これは謎。ポリフォニック音楽であるから旋律的イントネーションの方が望ましい。けど、同時に和声を作る働きもあるから、和声的イントネーションでも弾く必要がある。あの音数の中で使い分けるの‥? 一応チェンバロ様の通奏低音記号があるから理屈ではできるけど、
現実としてそんなんできるのかな。
弦楽器って奥深過ぎ。