A級チェリストへの道

チェロの上達のちょっとしたスパイスに

マスタークラス受講してきた

アンサンブル・モンソロのマスタークラスを受講した。アンサンブルの大切なことをたくさん教わったので、備忘録として書いておく。

 

□アンサンブル・モンソロ

http://www.monsolo.fr/jp/index_jp.html

 

曲はヴォーン・ウィリアムズピアノ五重奏曲の一楽章。フランス人相手にイギリスの作曲家は大丈夫だろうかと思っていたが杞憂に終わった。よかった。

 

□チューニング

1.ピアノ→バイオリン→全員で

2.一人一人チューニング。一斉にやらない。

3.広めの5度で(これはピアノがいるからだろう)

一度曲を通してからチューニングの不備を指摘されやり直しとなり、その際に上記方法を指定された。確かに。オーケストラ的な音程の意識ではダメということだろう。

 

□ドゥナーミクとアーティキュレーション

かなり事細かに指摘が入る。言われてみるとそうだよなー、ってことが多い。作り込めてなかったわけだ。どう表現するかは奏者次第だが、書いてあることをもっともっと消化するのが必要。しっかりスコアを読み込んでどんな音楽にするのかをイメージするのが大事なんだな。

印象深かったのはフォルティッシモの際のアクセントの不足。付けているつもりでも、もっともっとと言われたシーンが多かった。おそらくアクセントを付ける弾き方ができないのかも。要自分の音を見直し。

 

□音程合わせ

まず2人ずつで、音量をピアノで合わせてみる。ハモる音程と音量をここで作る。合ったら別の組み合わせで同じ作業をしていく。

フォルテで弾くとまたズレたりするので、ピアノで合ったから良いというわけではない。

音程に関しては、メンバー個々の音程感というのがあるで、それを寄せていく作業が必ず必要だとのこと。誰が絶対合っているとかではなく、互いが互いに聴き合って音を寄せるのが大事。

 

この作業やってみたら、見違えるハーモニーになった。ビックリした。

 

□ヴィブラート

旋律の弓を返す最後の音にヴィブラートがかかっていない、しっかりかけるとのこと。

これ、無自覚過ぎて自分がどうしているのかすら分からなかった。ポジション移動の直前とか、音価が短めだとかかっていないよう。これは良くないね。自分都合が音に出過ぎた。しかも認識していないというダブルパンチ。

修正すると、長い旋律が途切れていたのが解消された。びっくり。

 

□アンサンブルを作るために

今回のレッスンで指摘されたことは、意識していたけど十分に効果が上げられていなかったことも、目から鱗だったこともある。音程についても、個人攻撃になりやすいからあまり言いづらいケースが多い。そして、プレイヤーだと客観的に聴くのが難しい。自分らで取り組む時にはどんなことに気を付けてどうしていくのがよいかを最後に聞いた。

 

回答としては、まず何でも言い合えることになること。そして、気付いた点があればその場でしっかり伝えることから始める。客観的に聴くのはたしかに難しい。録音や録画をしたり、定期的に人に聴いてもらうこは大事、という内容だった。

 

□僕の思ったこと

全体を通して感じたのは、自分らの音程に対するシビアさの欠如。音程がめちゃ悪いわけではないけど、なんとなくしか合ってないよと暗に言われた。それをどう改善していくかの方法を教えてもらったのは嬉しかった。

ベースの音程が全体的に悪いのを放置していたが、ベースだから仕方がないという考えは音楽に対してもプレイヤーにも真摯ではない。しっかり話し合っていきたい。

 

あと音楽の読み込み不足。スコアから得られる情報でもっともっと分かる部分はある。

いやー、アンサンブルは最高に楽しい。

 

 

 

作曲家の生きた“時代”を知る

先日、You Tubeのおすすめに以下動画が出できたので、軽い気持ちで見た。

 

映像の世紀プレミアム「運命の3つの都」パリは燃えているか

https://youtu.be/n5K9v58CztA

 

パリ、ベルリン、ニューヨークの20世紀の歴史を貴重な映像付きと解説で紐解いていくものだ。

ちょうど僕が今取りかかっているラベルの弦楽四重奏曲ができた1903年あたりから話が始まり釘付けになった。

 

1900年前後のパリ。思ったより凄い。324メートルもの鉄塔であるエッフェル塔が建築家エッフェルに作られたのが1889年、地下鉄も開通し、動く舗道も導入されている。街並みはほぼ今と変わらず、車がないくらい。文化の中心で、音楽、絵画、文芸等のあらゆる分野のアーティストが集まっていたことだろう。パリで活動しないとお話にならない、そんな気分が蔓延していたことは容易に想像できる。映像付きだとより実感できた。

そんな時代にラベルは生きて、今耳にできる数々の名曲を生み出している。

そこまで調べてないから想像の世界だけど、当時パリを席巻していた印象派後期印象派の作品を目にした時どう思ったのだろうか。もしかすると、これはそれまでの長調短調の音楽では表現できない。どうしょう。みたいな感じで教会旋法による作曲を思い付いたのかも。

同年代のピカソらとサロンで話をして、新しい表現への刺激を受けたのかも。

エッフェル塔のレストランでシャンソンを聴いたり、マタ・ハリのような美女のダンサーを見るような生活であの旋律や激しいリズムが自然に出てきたのかも。

 

想像は尽きない。

 

クラシック音楽に取り組む際、時代背景を知りましょうとはよく言われることだが、こういうことだったのか。パリ万国博覧会のことは教科書に書かれているけど、映像を見ることでリアリティ感が湧いた。

ラベルの生きた年代は知っていたけど、こういう“時代”を過ごしていたのは知らなかった。

 

おもしろい。もっと色々知りたくなる。ラベルの弦楽四重奏曲を弾くにあたって具体的にどうリンクするかは分からないけど、作曲家の生きた“時代”を知るのはとてもおもしろい。

 

チューニング便利ツール

チューナー使いますか?

僕は調弦の時しか使わないようにしています。曲での音程確認は全部ピアノ。チューナーは意図的に使わないようにしている。

 

で、オケとかアンサンブルのバイオリンやピアノに合わせるチューニング。難しいですよね。僕は時間内に間に合わないことが多いので事前にある程度チューナーで合わせています。

でもチューナーで合わせてばっかりだと、いつまでたっても他の楽器に合わせるチューニングが早くならないし、耳も鍛えられない。そんなこんなで使ってるアプリがこれ。

 

■onsA440 by Groov-in. https://apps.apple.com/jp/app/onsa440/id356108470?l=en

アプリそのものが音叉という直球アプリ。ヘルツは変更可能。

まず、これでA線を調弦。時間かかっても完璧にやる。ウネリが0になるまで。結構難しい。でも習慣化すると早くなるし、耳もシビアに鍛えられていることに気が付く。

 

■PitchLab Guitar Tuner (FREE) by Karl Morton https://apps.apple.com/jp/app/pitchlab-guitar-tuner-free/id732850624?l=en

 

で次にこれで確認。これは単なるチューナーだが、音をしっかり拾ってくれる。オケとかのやかましい中で拾ってくれる。

これてちゃんと合ってなかったら音叉アプリからやり直し。初めは合わないこと多かったけど、今はバッチリ合わせられるようになった。

他の弦もA線に合わせて調弦し、このチューナーアプリで確認する。2セントの違いもちゃんと拾ってくれる。

 

テクノロジー素晴らし。

再生・録音便利ツール

window XPの時代、最高の音楽再生ツールの1つとして名を馳せた「聞々ハヤえもん」。

なんとアプリでも存在する。楽器弾きなら入れておきたいアプリ3指に入ると思う。おすすめ。

http://hayaemon.jp/

 

■できること

・再生速度可変(音程は変わらず)

・再生キー可変

・各種エフェクト

クラウドツールとの連携

 

■実際の使い方

僕は基礎練習の時に使う。以下音源に合わせてスケールを弾くのだ。

https://www.dropbox.com/sh/tilg8vszvmyygg8/AADSH_dgnyluoVNIUkO2h4Aea?dl=0

 

音程可変ができるから、12調全てに対応できるのがキモ。

これで以下の練習をする。

・スケール4オクターブ

・3度ごとのスケール 4オクターブ

・3度重音スケール 2.5オクターブ

・6度重音スケール 2.5オクターブ

・オクターブ重音スケール 2.5オクターブ

 

音源は妙な揺れがあって少し気持ち悪いが仕方がない。これをテンポ60で、4拍、2拍、1拍、0.5拍で実行。

アルペジオ平均律ではできないので、キーボードで持続音を鳴らしている。

全部やると50分かかる。めちゃ疲れるので、はしょることも多いけど。

なお、キーは一日ひとつ選んで弾く。C,D,Es,E,F,As,Aが多いかも。記号4つまでなのか。書いて初めて気付いた。

 

もう一つ、アンサンブルの練習録音の再生でも使える。リバーブ機能があるので、軽くかけて聴くため。生音だと辛いことが多いから。

 

色んな使い方あると思うけど、テクノロジーを練習に採り入れるのは有効だと思う。

凄いモーツァルト聴いた

先日、サントリーホール小菅優さんのサントリー音楽賞受賞記念コンサートがあったので行った。

 

https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20190802_M_3.html?fbclid=IwAR20Ha_jmrw7Gom9niP7WgxiaAWTRDeD1M2sgW-QerTKWPfgd_5Y7Np-A_Y

 

初っ端のモーツァルトのバイオリンソナタでやられた。pの表現力、フレーズの持っていき方、バイオリンとのアンサンブル。挙げればキリがないが、極上のアンサンブルを聴くことができた。

 

モーツァルトってなんか先入観があって、テンポ通りに弾かないととか、過度な揺らしはしてはダメとか。

で、それで出来上がるのが、よく耳にする退屈な演奏。初めの2分くらいは聴けるけど、だんだんどうでもよくなるやつ。一言で言うと、「クラシック音楽のあれ」ってやつ。

 

そんな音は一音たりともなかった。フレーズの全てが歌。具合的に言うと、微細なテンポの揺らし方、音の抜き方、溜め方が全て自然に気持ちよく表現され、歌としかいいようのない旋律を奏でる。

それでも逸脱することはなく、モーツァルト的世界を構築している。

バイオリンの樫本大進さんも、「どうだ、凄いだろう」みたいな音は一切なく、全て音楽の表現に没頭しているのがよく分かった。

 

メトロノーミックに弾くことの違和感を持っていたけど、それでいいですよ、感じるがままに表現するのが音楽ですよと、優しく教えてくれた気がする。

 

あんな音楽はこの先楽器を続けても表現できる日はこないと思う。聴いた直後は楽器弾くのイヤになってしまったけど、今はまた弾きたくてしょうがない気分。

 

ホント素敵なひと時だった。

クレッシェンド、デクレッシェンドいろいろ

クレッシェンド、デクレッシェンド。音楽を奏でる上で欲求としても当然だし、いかなる曲でも必要とされる。

 

チェロで弾く場合、具体的な方法はいくつあるだろうか。

1.弓速度を徐々に上げる

2.弾く場所を徐々に駒寄りにする

3.弓の毛の量を徐々に増やす

4.ヴィブラートの振幅速度を徐々に上げる

こんなもんか。1〜3は圧力コントロール、4はそれ以外。実際は上記の混合および身体的な表現が多いのかな。

 

今度ラベルのカルテットを1楽章だけやることになったんだけど、とにかくクレッシェンド、デクレッシェンドが多い。息の長いものから短いものまで様々なパターンを要求される。水彩画のような曲調で、どう弾けばらしくなるのかも皆目分からん。

 

そんなわけでこのタイトルのことを採り上げてみた。

ポイントはやはり圧のコントロール。元から先までを右手で支配する必要があるのだろう。

それと、音の再現性。何回弾いても同じようにするために事前にどういったクレッシェンド、デクレッシェンドするかを決める必要がある。弓の配分、場所、ヴィブラートの量、これらを全部決めておく。

 

問題はどうクレッシェンド、デクレッシェンドするのがふさわしいか。

どうもラベルはロマン派の作曲家とは勝手が違うのか、色々試してみてもしっくりこない。プロフェッショナルな方の動画を見て研究しようか。

 

 

音程いろいろ

先日、「弦楽器のイントネーション」という本を買った。弦楽器弾きなら誰しも悩む、旋律の音程、ハーモニーの音程について事細かく記載されており、とても参考になった。

 

結論としては、音程には「旋律的イントネーション」「和声的イントネーション」がある。我々弦楽器奏者は両者を使い分けて曲を弾く必要があるということ。

 

メジャーコードであれば第三音を14セント下げることで完全なハーモニーを得られるのはよく知られている。

ドミソであればミ、ファラドであればラだ。これが和声的イントネーション。いわゆる純正律というもの。

 

ただ、この音程で旋律を弾くととても締まりがない。旋律を弾く時は旋律的イントネーションで弾く。これはピュタゴラス音律のこと。

チェロのCメジャースケールで説明しよう。

C線1ポジD音は、G線完全4度下で合わせる。

C線2ポジE音は、A線完全4度下のE音のオクターブ下で合わせる。

F音はC開放弦の完全4度上。

G音は開放弦。

A音はA線開放弦のオクターブ下。

B音はA線開放弦4度下のE音の完全4度下。

C音はC線開放弦のオクターブ上。

 

これは僕もチェロ学習初期で確認していた作業だった。ピュタゴラス音律だったのか。

説明によると全音は広め、半音は狭めになるよってこと。ただ、狭めと言っても2セントとか4セントの話だからほんの気持ちの話かも。

 

チェロという楽器の役割上、伴奏の方が多い。そこで、和声的イントネーション、旋律的イントネーションがごっちゃになっていたけど、これからはハッキリと使い分けてみたい。

 

ちなみに両イントネーションで顕著に違うのはメジャースケールの3,6,7音。16セントも違う(100セントで半音)。

 

 

一番参考になったのは、実際にカルテットで弾く時どうするのってこと。

簡単にいうと、メロディは旋律的イントネーション、伴奏は和声的イントネーションにしましょうと。ただ旋律的イントネーションでも、音によっては和声的イントネーションも採り入れると。

例えばCメジャーの曲を弾くとき、旋律でfis音を弾くとき。和声がダブルドミナントのDコードだったら、14セント低くとって一時的に和声的イントネーションとするみたいな。

でも早いパッセージだったら旋律的イントネーションの方が煌びやかに響く。

カルテットをやる時は、楽器を弾けるだけじゃダメ、基礎的な和声知識を持って事前にスコアリーディンしてねって話。

でもこの話はロマン派初期くらいまで。時代が進む程に、和声も構造も複雑になるから、旋律的イントネーションでやった方がいいとな。

 

文章にするとそんな細かいことって思うけど、多分みんな無意識でやってるはず。

 

読み終わった後、ヴィルトゥオーゾが聴かせてくれるあの煌びやかで心地良い音程の秘密を垣間見た気がした。絶対ピアノの平均律音程じゃあんなんならんもん。

 

あと、バロック様式を弾く時。バッハとか。これは謎。ポリフォニック音楽であるから旋律的イントネーションの方が望ましい。けど、同時に和声を作る働きもあるから、和声的イントネーションでも弾く必要がある。あの音数の中で使い分けるの‥?  一応チェンバロ様の通奏低音記号があるから理屈ではできるけど、

現実としてそんなんできるのかな。

 

弦楽器って奥深過ぎ。

右手先と身体の距離

弾くときの構えの話。

弓の持ち手と肩ってどんくらい離すんだろうか。教本にも書いてないし、ヴィルトゥオーゾ達も様々。

ロストロポーヴィチはえらい距離が狭くて窮屈そう。ヨーヨー・マは距離長い。でもみんな良い音出すよね。

 

身体特徴も絡んでくる話だから、こうってなのはないんだろうけど、この距離で音が結構変わるのは間違いない。こないだ初めて気付いた。

 

僕は身体を前にだすことで距離を短めにしたけど、色々改善できた。

・弓を置く場所のコントロール

・弓先で圧抜けない

・弓元の圧のコントロール

・小指による弓制御

 

左手にも好影響がでたし。

 

上達で悩んでるとき、こんなことでも色々変わったりするもんだよという事例でした。

 

人前で弾くとき

先日、ボランティアで小学校に行き児童の前でソロを何曲か弾いてきた。

 

音楽性の追求というよりも、音楽の楽しさや綺麗な音を堪能してほしいなぁと思って弾いたけど、大事な気付きをもらえた。

 

笑顔で弾くこと。身体全体で弾くこと。自身が楽しんで弾くこと。多分これが1番大事。綺麗な音や音程よりも(もちろんこれも大事だけど)。

 

演奏始めるとみんな真剣な眼差しで聴いてくれるけど、なんか緊張気味なんだよね。で、こっちが楽しそうな笑顔にすると、とても嬉しそうな顔になる。

 

でも終始笑顔ってのはまだ僕にはできなすて、かろうじて口角をあげるくらいがやっと。

演奏自体は喜んでもらえたし良かったけど、あの笑顔をずっと引き出したかったなぁ。

 

演奏中も俳優になりたいけど、これどうやんだろね。家でニコニコ一人で弾くのも難しいし。んー、分からんねぇ。

 

メトロノーム

基礎練習のお供、メトロノーム。テンポの正確性を養えるメトロノーム。自分の運弓の不都合さを雄弁に指摘してくれるメトロノーム

 

その力を絶対的に過信していたけど、使いようなんだなーと気付いた今日この頃。

 

結論から言うと曲練習では使わないことにした。フレーズ感が小節単位で分断され、大きい山を作れない。音楽がメトロノームに支配されて、自然な流れを生み出せないから。

 

アンサンブルの縦を揃えたいなら、聴き合う、感じ合う。聴いて感じて呼応してあげる。それはテンポのみならず、細かいドュナーミクや運弓も。そうやって音楽を作っていかないと本番で悲劇が起きる。

なぜなら本番ってのは緊張状態だから、何かに頼りたくなる。頼るのがメトロノーム的なテンポだと音楽の流れが不自然に歪められて、聴いていて全然面白くない。この感じを例えると、大事な話をしたのに、あっさりと流される時みたいな。

クラシック音楽はどんな一音にも意味がある。普段の練習からそれを大事にしていかないと。そのためにはメトロノームはむしろ邪魔になってしまう。

 

とは言っても勝手気ままなテンポで弾いていいわけではない。色々なアーティストの音楽を聴いてどうフレーズを構築しているかを色々経験して、落とし込まないと。そのための練習だ。

僕は今までは音程と音質にこだわって練習していたけど、同時にテンポを作るということにもこだわらないといけない。どれも外せないし、分離もできない。3つで1つの要素。

コンサートを終えて

先日、半年前から取り組んでいたピアノ五重奏、ピアノ四重奏を全楽章という僕としてはチャレンジにあたるコンサートが終わった。

 

◾️良かったこと

・聴衆の反応。アンケートコメントで感動したという内容がいくつも。嬉しい。

・大きなミスなし。いつ崩壊してもおかしくない曲だったので安心した。

・本番マジック。ピアノが本番だけとても情緒豊かな旋律を弾いた部分があった。演奏中だったけど感動して鳥肌立ってジワッときた。

・個人が上手い。上手いメンバーを誘ってのことだから当たり前だけどこれは大きい。音程による大きなストレスもないし、誰かに合わせるのではなく一人一人が自分のテンポを持ち結果合う、ということができた。

・創造できた。何かの演奏の猿真似ではなく、フレーズごとに意味をもたせて自分らで曲を作る作業ができた。時にぶつかることは合っても。

 

◾️反省点

・緊張により周りを聴けなくなった。僕も含めてだが、演奏中いつもより周りを聴けていない。旋律の対話が対話になっていない箇所があり残念だった。

・緩徐楽章がメトロノーミック。これは当初からの課題だった。全てのフレーズに意味を持たせ旋律を歌わせたかったが難しかったみたい。フレーズ感や和声進行を無視した、音を鳴らしているだけの伴奏や旋律がいくつか散見された。

・表情。顔も上げてたし、旋律を奏でるときは全神経を左右の手に込めていたが、それでも足らないみたい。嫁に言われた。

・最後まで弾けない場所あった。確率でいうと70%しか音が当たらない難易度の高い音があった。結局間に合わず、本番も外した。

 

■総じて

今までの僕のレベルからは一段上に行けたのだと思う。

特に音楽を作る作業。フレーズ単位で意味をもたせて、どう音楽を進行させるかが自分なりに分かるようになったし、実際に録音を聴いても間違いではなかった。

 

演奏がうまく行かないときの原因をすぐさま特定できるようにもなった。例えばリットしたいとき。原因はリットの部分ではなくてその前にあるし、伴奏の弾き方にもある。そういったことがすぐ分かる。

 

あと自分自身の技量。とてもうまくなったと思う。良い音程と美しい音、自分はこう弾くぞと周りに伝える弾き方。今までの僕にはなかった。

 

少なくない時間をかけて、その成果として聴衆には感動を、自分に喜びと成長を与えられた。とてもとてと楽しいコンサートだった。

ひとつA級チェリストに近づけたかな。

 

Perfection is great,but it's not enough

https://youtu.be/u1_KOJ8h9qY

 

ボストンフィルハーモニーのマエストロ、ザンダー先生のマスタークラス。

僕はこのエルガーのチェロコンチェルトと、チェリスト、ダニエル・ハスを忘れない。

 

そして、チェロを弾く身としてこの素晴らしい曲をいつか奏でることをできることも。

フレーズの躍動感

スーパー上昇曲線を描き、チェロライフを満喫している僕の今の課題。

 

「弓の初速」

 

フレーズを弾いてて、どうもノッペリしてるなーって思う時は、大体弓の速度と音楽が一致していない。そう、弓が遅い。

 

僕の大好きなJerusalem Quartettoのチェリスト、Kyril Zoltnikovの弓捌きを見るとよくわかる。

https://youtu.be/lz1b8YZj0f4

この最初のA音。なんと素晴らしい。この1音だけでフレーズの躍動感が伝わる。

 

そう、音楽を奏でるとき、決して弓の動きは均等でない。同じ旋律でも1音で50センチ使うときもあれば、4音で10センチも使わないときもある。同じ音を弾いてる瞬間でさえ、弓の速度は著しく違うときもある。

 

楽譜にアーティキュレーションとか何も書いていなくても、フレージングからどういう弓使いが適切かを読み取る。そして適切な弓の配分が躍動感を生み、メトロノーミックではない自然な流れとしてのテンポが生まれる。

 

適切な弓の配分によるフレージングは身体全体にも現れる。するとアンサンブルの周りの奏者との連携もうまくいく。ここは前に行きたい、ちょっと溜めたい、そういったことは打ち合わせで合わせなくても、音さえ聴いてもらえれば自然と分かる。

むしろそうしないと音楽は流れなくて、不自然になってしまう。決めるのではなく、周りがそうしたくなるように弾けばいいだけ。

 

楽譜に書いてある音の羅列を音楽にするのは僕の右手。これができるようになったら本当に素敵だな。A級チェリストへの大いなる前進。

 

スーパー上昇曲線

チェロに限らないが、ある時突然伸びる瞬間がある。

 

それが今だ。

 

ずっと、なんとなく合ってるけど美しくない音程だった。レイトスターターの音感問題かと思って絶望気味で、この先チェロを弾いていても美しい音程を奏でることはできないのではないかと常に思っていた。

 

はい、違いました!

 

きっかけはよく分からない。ふと構えを変えた。具体的には上半身をチェロに対して前に少しだけ移動した感じ。肩の位置がチェロに対して前になったと言おうか。

 

それで変わった。いきなり美しい音程がチェロから出てきた。衝撃。チェロ始めて20年弱。ずっと試行錯誤してきた肘の位置、左手の甲の形、角度……。

 

それが全て解決してしまった。鏡で確認すると、いかにも正確無比に押さえてますといいたげな美しい手の形。自分の左手ではないみたい。

 

しかも!   ハイポジションの音程も安定してきた。肩が前に出たことで、肘の位置も前に出て、手の形が自然になった。押さえの圧力も強くなった。音が凄く太くなる。

 

どうせ奇跡で明日には戻っちゃうんでしょ、とか思ってたけど戻らない。押弦する弦が変わっても変な小細工なしで、ありのままに良い音程が出る。

 

左手の微妙な小細工調整が不要になったら、音楽もイキイキとしてきた。左手に気を使わなくていいからだ。ボウイングに躍動感が出て、身体全体で弾ける。

 

なんやこれ。凄いぞ。

 

チェロ弾いててここまで劇的に変化を目の当たりにしたことがない。嬉しすぎる。

 

 

左手だけかと思いきやなんと右手も。

 

これもきっかけはよく分からない。ふとフロッグを持つ位置を毛の生えている方へ1センチくらい動かした。

 

そしたら、なんとめちゃんこバランスがいい。意識せずとも小指も機能してくれる。腕を自分ではないように軽やかに動かせる。

圧力も勝手にかかるようになり、駒寄り音が自然。音はデフォルトで太く明るい。腕が軽いので音質変幻自在。

 

ペレーニがよく見せる弓元の極限粘り、なんとこれができた!   弓の長さが体感1.3倍くらいになった感じ。こんな弓元まで使えちゃうの?  みたいな。

息の長い旋律を朗々と弾ける。こんな日がくるとは。

 

旋律だけではない。早いパッセージを歯切れよく弾くこともできる。なんでだか分からん。小指の安定か?

 

7月の室内楽コンサートの曲でずっと苦しんで、試行錯誤していた。その甲斐あってか、ついに突き抜けた。

 

全身全霊で取り組んでいたから、神様がヒントをくれたのか。それほど突然訪れたこの上昇曲線。

 

チェロ弾いてきて、一番楽しい。こんな日がくるなんて夢みたい。

備忘録

【右手】
手首が落ちてるから根元が苦しい→

手首上げる→

→根元含めて音色コントロールが良くなった

【左手】
チェロの構えを下げて自重をよりかける→

・音がクリアになった

・ヴィブラートがかなりダイナミックになった

・弓のテンションに負けないからボウイング根元が楽になった

→反面チェロの構えを下げ目にしたからポジションの感覚が変わり音程悪化(特に低ポジション)

【次なる課題】
・右手の手首が落ちる癖修正

・右手の圧力が低下したから腕の自重がよりかかるように改良

・同じく右手の圧力低下により駒寄りで弾きづらくなったからなんか考える

・左手のポジション感を養う